グレース・ワーナーを知っていますか?
彼女の原点は、ミシガンのロープトウにあります。
グレース・ワーナーは、次世代のライダーを引っ張っていく存在です。『CORRUPT』でのフルパートで一躍シーンに登場してからというもの、『The Uninvited Ⅲ』や『Hot Coco』への出演、Dew Tourでの銀メダル獲得など活躍の場を広げています。その結果、グレースはベテランジバーやレジェンドたちから注目されるようになりました。
Burtonチームに加入してからも、純粋にスノーボードを楽しむ姿勢に変わりはありません。かつての放課後セッションによって築き上げられたスタイリッシュでテクニカルなトリック、そしてあらゆるアイテムに対応するスキルには要注目です。
今シーズンは撮影のために来日するなど、ますます目が離せないグレース。今回は、彼女のバックグラウンドについて聞いてみました。
今まではどこで滑っていたの?
家から10分くらいのアルパインバレーというリゾートで滑っていました。学校が終わると、いつも両親が私や兄弟(カイル、ドレイク、アヴァ)をリゾートまで送ってくれました。冬の間は、毎日のようにアルパインバレーにいましたね。つまり、あのゴミ捨て場(アルパインバレーは、ゴミの埋立地に立地している)が私の原点です(笑)。私にとって、冬の放課後=スノーボードでした。
スノーボードが大好きでしょうがないって感じだった? それとも、ただの放課後の遊びだった?
みんなチームスポーツにも夢中だったんです。1年を通して放課後は練習へ直行という日々で、スノーボードは冬の遊びでした。練習へ行くのは嫌々でしたが、滑りに行くのは楽しみで仕方なかったことを覚えています。きっとカイルたちも同じ気持ちだったと思うので、みんな本気でスノーボードが大好きだったんです。
スノーボードを始めたのは何歳のとき?
私が4歳のとき、お父さんが兄弟全員にスノーボードを買ってくれたんです。リゾートまで運転してくれるだけじゃなく、お父さんはレッスンもしてくれました。兄弟は3歳ずつ離れているので、誰かがカービングをマスターすれば、次の誰かがターンを学び始めるという感じでした。
スノーボードはできるだけ小さい頃から始めるべきだと思います。体が小さければ転ぶのも簡単なので。いつリゾートの上から下まで滑り降りられるようになったかは覚えていませんが、とにかく楽しかったことはハッキリと覚えています。トリックなんてできないけど、ただ滑っているだけで楽しかったんです。この気持ち、わかりますよね?
きっとお父さんの教え方も上手だったんでしょう。私はどんどんスノーボードにハマっていきました。
お父さんもスノーボードが大好きだったんだね。昔からスノーボードが好きだったのかな?
お父さんは根っからのスノーボード好きでした。古いForumのTシャツを着たお父さんが私を抱っこしている写真もあります。
お父さんのまわりにはスノーボーダーが多かったみたいで、特に親友のドンから影響を受けたみたいです。実際、毎シーズンのように西海岸や東海岸へトリップするくらいのめり込んでいたようですし。いつもスケートショップで最新ギアを買っていたって、お母さんが教えてくれました。それを聞いても、正直あまり驚きませんでした。だって、今も同じことをしていますから(笑)。
私たちがスノーボードにのめり込むようになると、さらにハマっていったみたいです。常に最新情報をチェックして、まるで仕事をしているのかと思うほど真剣な表情でBomb Holeのポッドキャストを聴いています。そんなお父さんって稀な存在だと思うので、私はかなり贅沢な環境で育ったのかもですね。私の家族はスノーボードでつながっているんです。そう考えると、スノーボードが持つ力って計り知れないですよね。
小さい頃のインスピレーションは何だったの?
これを聞くと誰もが「嘘でしょ?」と思うみたいなんですが、小さい頃はよくバックカントリーのムービーを観ていました。もちろんオリンピックやX Games、Dew Tourなんかも観ていましたが、何よりバックカントリーの映像が好きでしたね。
当時は自分がプロになるなんて想像すらしていませんでした。ヘリコプターでアクセスして、あんなスティープな斜面を滑るなんて夢の世界でしたから。コンテストにもさほど興味はありませんでした。そのあと何年かして、ストリートに興味を持つようになったんです。映像を観れば観るほど、「これなら私でもできるかも……」と思うようになったんです。スノーボーダーとして生きていくための1つの道だって思えたんです。
初めて観たストリートのムービーやライダーのことは覚えている?
『Defenders of Awesome』のDVDは強烈に覚えています。ジェス・キムラのパートを観て、「マジ!? 超ヤバいんだけど! 女の子でもこんなビデオを作れるんだ!」って衝撃を受けました。あれを観て、より一層ストリートに興味を持つようになったんです。それからは、兄と一緒に『Video Grass』や『Change That Tape』『1817』を観ましたね。いろいろ観ていくなかで、ヘリもビッグマウンテンもないストリートスノーボーディングこそが私の道だって思うようになったんです。ミシガンの仲間たちと一緒にビデオを作るんだって。
「(Burtonのチームライダーになって)新しいボードをタダでもらえて、最高に興奮しました。もう兄のお古をペイントして使う必要はないんだって」
Burtonとの出会いについて聞かせて。
まず言っておきたいんですが、メーカーにフックアップされるなんて夢にも思っていなかったんです。まわりにもスポンサーされている人なんていなかったので、(Burtonからのオファーを聞いて)正直かなり驚きました。もちろんUSASAの子たちはいましたけど、それくらいです。
2018年のある日、マーカス・ウィルソン(グローバルアスリート&アンバサダーアシスタント)から「サイズはいくつ? ギアを提供したいんだけど」ってDMが届いたんです。正直、何のことだかわかりませんでした。新しいボードをタダでもらえて、最高に興奮しました。もう兄のお古をペイントして使う必要がないんだって。
その直後、BurtonのInstagramでフッテージが出ていなかった?
そうですね。トロールハーゲンで撮ったクリップをSNSに投稿したんです。それを見たBurtonから「リポストしたい」って連絡がきたんです。リポストされた途端にスマホが鳴り止まなくなりました。友達や親戚、家族から連絡がきて、みんな喜んでくれました。ちょっとセレブ気分になっちゃいました(笑)。
2020/2021シーズンは、ミシガンをメインに『CORRUPT』や『The Uninvited Ⅲ』の撮影をしていたよね? 初めてのスポットが多かったけど、どうだった?
予想以上に仕上がりが良くて驚きました。シーズン初めは撮影の予定も決めていなくて、スポットをチェックして「良さそうだったらやろうかな」くらいのノリだったんです。2日間ほど撮影してみたら調子が良くて、気がついたらショートエディットを作れるくらいのフッテージが溜まっていたんです。あのシーズンは全てが上手くいきました。みんなががんばったので学びも多かったですし、これ以上最高なクルーはありません。
それから、Instagramで私のクリップを目にしたジェスから連絡がきたんです。最初は本当に信じられませんでした。撮影をするようになって1年たらずでジェスからアプローチしてくるなんて。「嘘でしょ!?」って。私がストリートでの撮影を始めたキッカケが彼女ですし。その後はとんとん拍子で、結果として『The Uninvited Ⅲ』でパートを取ることができました。
昨シーズンは、新たなメンツとトリップに行ったんだよね?
そうです。マリア・トムセン、イウファ・ラナスタッダー、ノラ・ベックと新しいプロジェクトに参加しました。初めてヨーロッパへ行って、彼女たちと撮影をしました。ヨーロッパの旅は本当に刺激的でした。急遽決まったトリップだったのでバタバタでしたが、それも良い経験になりました。
みんなスポットを熟知していて、準備も完璧でした。毎日ちゃんと計画を立てて、1秒たりとも無駄にすることなく、暗くなるまでひたすら撮影でした。今後もその姿勢をキープしたいです。
Dew Tourでも活躍したよね。コンテストに参加したキッカケは?
デズリー・メランコンからストリートジャムに誘われたんです。自分はコンペに出るようなライダーじゃなかったですし、自信もなかったので、「YES」と言うまで時間がかかりました。でも、そんなチャンスはなかなかないし、断ったらただのバカだって思ったんです。
コンテストはどうだった?
家族みんながミシガンから応援にきてくれました。それがすごい嬉しくて、一番の思い出になりました。アスリートサポートはお父さんに頼んだので、スタート地点ではコーチとして立ってもらいました。私にとっても、お父さんにとっても、あのイベントは最高の思い出になったと思います。ちなみに、お父さんは誰よりもハイテンションでしたよ。
でも、初めての舞台にかなり緊張しました。「絶対にコケないんだ」って自分に言い聞かせていました。
表彰台に上がるなんて思っていたの?
想像すらしていませんでした。自分のランが終わってあとは、転ばなかったことにホッとしていたくらいです。私にとっては、初めての女性だけのレールジャムでした。名前を呼ばれたときは信じられませんでしたし、実際は今でも信じられていないくらいです!
今ホットなものは?
最近は、イケイケな次世代スノーボーダーを見ることが楽しいです。高い山がほとんどないミッドウエストでは、コミュニティのつながりが強いんです。まわりのキッズは本当に上手で、私も良い感じで影響を受けます。特に、ここ最近は女の子の勢いがすごくて嬉しい限りです。
おまけの質問: 初めてメイクしたキックフリップに対してトニー・ホークがコメントをくれる。もしくは、自分のクリップにマーク・マクモリスが毎回コメントしてくれる。どっちが嬉しい?
かなり難しい2択ですね。正直に言うとトニー・ホークのコメントですかね。マークを失望させるつもりはないんですけど、私のキックフリップにトニー・ホークがコメントしてくれるなんてヤバ過ぎます!
最後に伝えたいことはある?
お父さん、お母さん、カイル、ドレイク、アヴァ、お爺ちゃん、お婆ちゃん、叔母さん、叔父さん、従兄弟のみんな、ブレント・ベーム、クーパー・ボスバーグ、マーカス・ウィルソン、リーバイ・ライアーソン、パット・ダッジ、ザック・ニグロ、チェルシー・ウォデル、ベン・クラーク、ヘニングファミリー、ギャリスファミリー、カールソンファミリー、ゲイブ・フェズ、チェイス・ブレイクリー、デレク・レムク、ジャクソン・マクナリー、デズリー・メランコン、ジェス・キムラ、ジャック・ハリス、ジャスティン・レヴィール、マックス・トクナガ、Slush Magazine、Torment Magazine、そして今までサポートしてくれた仲間たち!みんな、ありがとう!